高血圧と歯科医療対策

まず・・・高血圧とはどんなものでしょうか?

収縮期血圧が160mmHg以上、又は、拡張期血圧が95mmHg以上のどちらか一方。
あるいは両方の場合を高血圧とします。

正常値:140/90mmHg以下
境界域高血圧:140/90~160/95mmHg   【WHO判定基準より】

高血圧は2種類あります。
1つは、本態性高血圧。もう1つは、二次性高血圧です。

本態性高血圧
全体の80~90%といわれ、原因は不明とされます。(体質・塩分・ストレス・喫煙・遺伝的要因)
虚血性心疾患や脳血管障害、腎臓障害などの多臓器病変を継発します。

二次性高血圧
全体の10~20%であり、腎疾患や妊娠中毒、副腎腫瘍に続発して発症します。

 

『高齢者高血圧の特徴』
収縮期血圧は加齢と共に上昇します。 拡張期血圧は50~60歳以降では低下することが多いとされています。 日内変動が大きく、わずかな侵襲で容易に異常高血圧を示すことがあります。高齢者の脳卒中患者の場合、膀胱に尿が充満している状態で辛抱されてしまいますと、治療中に突然、血圧が急上昇することがありますので、治療期間が長い時など尿意をもようしていましたら、スタッフもお尋ねしますが、患者さまもスタッフにお話しください。

 

『問診』
以下のことについて聞かれます。
・高血圧症状の有無:顔面紅潮・動悸・息切れ・頭痛・めまい・肩こり・耳鳴り・浮腫みなど
・発症の時期と期間:長期間の既往は心疾患系に障害の可能性があります。
・合併症の有無:心肥大・脳卒中・狭心症・心筋梗塞・心不全・腎不全など
・内科治療や服薬の有無:受診頻度・用法・用量で重度を把握します。
・主治医(内科医)への照会事項:処方されている薬の種類と量・最近1~2か月の血圧の変動・合併症の有無・重症度など

 

歯科治療に伴う痛みや不安感、恐怖心からの精神的ストレスを極力少なくして治療を行います。歯科治療は午前中が望ましく、その日の降圧剤服用の確認を行います。 抜歯は診療に慣れてから実施します。止血には局所止血剤の使用、抜歯窩の縫合が有効です。コンディションが悪い時には抜歯しません。急性炎症時の痛みにより血圧が上昇する症例では鎮痛剤・抗生剤などの薬物療法を行います。

 

以下に、更に詳しくお話します。どうぞお読みください。

 

【 血圧が上がる要因 】

大きな感情の変化やストレス・痛み
 ・お口の中の治療というのは『見えない治療』である。
 ・麻酔は歯肉に打つので、強い恐怖心を伴う。
 ・「歯を削る」ことに恐怖心を持つ。

■塩分の過剰摂取

■運動不足

■肥満

■過労

 

高血圧の患者さまは、動脈が硬くなっていますので、高血圧でない患者さまに比べて、血圧が上がる幅が大きいと考えられています。
それ故、血圧の管理が非常に大切になります。

 

【 動脈硬化の流れ 】

正常な血管

   


高脂血症・高血圧症の血管

  ↓

脳梗塞・脳出血

 

動脈硬化が進むと、心臓や脳、全身の障害にもつながいっていきます。
他に合併症を持っている場合、その合併症を
コントロールしてから
治療しなければいけません。

 

 

【 高血圧性緊急症 】

「拡張期血圧(下の血圧)が130以上」を維持してしまい、頭痛・意識障害・
目眩・吐き気・嘔吐などが起きる状態をいいます。

24時間以内の血圧を下げる処置をしなければ、脳に器質的な異常を起こしてしまいます。

 

歯科治療中、又は、何をしていたとしても、中断をして安静にします。
血圧を計りながら、下がることを待ちます。それでもおさまらない場合は、
「アダラート」を10mg内服していただきます。
それでも下がらない場合は、総合病院の内科の先生のもとへ
緊急で搬送をお願いする必要もあります。

 

どんなにコントロールされていて、非常に良い血圧の状態の方でも、歯科治療でストレスを感じて、
血圧が上がって、それが持続してしまうと、このような状態になることがあります。

必要があれば、血圧計をつけさせていただき、歯科治療をしていく必要があります。

 

【 血圧の管理 】

まず、内科の先生にかかっていることが前提になります。かかっていなければ、基本的には
必要最低限の歯科治療のみということになります。

まず血圧を安定させてから歯医者さんにかかりましょう。

かかりつけの内科の先生に、現在の血圧の状態を確認すること。血圧が管理できていない場合は
まず、内科の先生に管理をお願いしてからの歯科治療となります。

 

【 治療に伴う不安や緊張を除去するために・・ 】

■歯科医などスタッフが患者さまとお話をさせていただいて、治療に関しては説明をし
 患者さまに納得していただいてからの治療になります。(信頼関係を築く)

■痛い処置をする場合・・・完全に痛みを取り除いてから治療をする(局所麻酔・レーザーなどを使用)

■抜歯や神経を抜くなどの時・・・心電図や血圧計を使用しながらの治療

■心臓・脳・腎臓に合併症がある場合・・・血圧の管理・会話・心電図・
                         腎臓に合併症がある場合には、薬を調整

 

 【 歯科医が聞きたいこと 】

■「高血圧ですか?」
 高血圧というものは、長い間かかっていればいるほど、血管のホースが硬くなっています。
 つまり動脈硬化が進んでいるということが考えられます。

■「どこのお医者さんにかかっていますか?」
 かかっていない患者さまもいらっしゃいます。歯医者さんに来て血圧が高いと分かり、内科に
 かかる患者さまもいらっしゃいます。
 そして、必要があれば・・・
 そのお医者さんに病状や「血圧の管理をどうでしょうか?」「しっかりお薬を飲まれていますか?」
 「何種類のお薬を飲んでいらっしゃいますか?」というお手紙を書く必要もあります。
 中には、お薬は飲んでいらっしゃらない方もいます。
 運動だけで直ってしまう高血圧もあります。(軽症と考えます。)

■「ご自宅で血圧を計っていますか?」
 ご自宅と診療所での血圧の差があまりに大きい場合は、
 白衣性高血圧(白衣を見ただけで血圧が上がる症状)を疑います。

■「高血圧の他に、心臓や肝臓や腎臓などのご病気はありませんか?」
 あった場合は、合併症に対して気を遣わなければならない。

■「以前、歯科治療で具合が悪くなったことがありますか?」
 あった場合には、心電図や血圧を計りながら治療をさせていただく場合もあります。