がんと心の中

参考資料 『患者・家族のコミュニケーション ~上手な気持ちの伝え方~』
発行: 「がん社会学」に関する合同研究班
主任研究者 山口建 (静岡県立がんセンター総長)
編著: 静岡がんセンター疾病管理センター よろず相談
静岡がんセンター研究所 患者・家族支援研究部



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普段、私たちは 相手の出しているメッセージを、言葉・声・しぐさ・表情など 全体から理解しようとします。
病院などでの検査結果を聞く際に、その内容と同じくらい 医師の声の大きさ・調子・速さ、 表情、視線、姿勢などが気になっていると思います。

コミュニケーションというものを考えた際、 『発した言葉』で得る情報が20~30%。 声や表情などから得られる情報は、全体の70~80%といわれています。

病気になったことで、これまでのような方法では上手く意志を通い合わせることが できなくなる場合もあります。

言葉を発する体の機能を、がんや その治療のために失うことがあります。 (=身体機能の喪失)

そのような場合には、筆談・ジェスチャー・人工声帯・人工喉頭・パソコンなどを使って コミュニケーションをとることができます。 又、がんになったことで、うつ病や不安、恐怖、抑うつを伴う適応障害、 幻覚を見たり、錯覚を起こしてしまったりするなど、心の問題を抱えてしまうことがあります。

このような場合、コミュニケーションをとることが難しくなったり、 人とのやりとり そのものがストレスになってしまうこともあります。 患者さんの心は、時期や体調などで大きく揺れ動きます。

 

診断

「がん告知」の衝撃

治療中

不安・孤独感・疎外感
どんな治療をするのか、上手くいくのか・・

治療終了 再発や転移の不安
心が落ち着かない
………………………………….. …………………………………………………………..
再発や転移(あった場合) 憤り・不安・絶望感
頑張ってきたのに どうして?
新しい治療はどんなものか?
積極的治療の中止 絶望感
見捨てられたような気持ち
終末期 死との向かい合い

 

 

患者さんも ご家族も、さまざまな心の悩みを抱えています。

 

問題  患者さん ご家族

人間関係の

問題

  •  病気のことを聞かれたくない
  • 心配させないように、
    つい「大丈夫」と言ってしまう
  • 周囲が気を遣いすぎる
  • 良き介護者でありたい
  • 自分の時間が持てない
  • 役割分担ができず
    1人だけに負担がかかる
  • 身体的な疲労

社会的な

問題

  • 仕事を休む
  • 仕事を続けることができるだろうか
  • 家庭内の役割を
    十分に果たすことができない
  • 役割の喪失感
  • 介護と仕事の両立の難しさ
  • 家庭内での役割を
    十分に果たすことができない
  • 患者さんの役割の一部を
    代行する必要性

実存的な

問題

  • 人生の意味への問い
  • 死生観に対する悩み
  • 価値体系への変化
  • 人生の意味への問い
  • 死生観に対する悩み
  • 価値体系への変化

経済的な

問題

  • 医療費が生活費を圧迫する
  • 通院の交通費や入院費
  • 休職や退職により収入が
    途絶えた
  • 学費やローンの心配
  • 医療費が生活費を圧迫する
  • 通院の交通費や入院費
  • 休職や退職により収入が
    途絶えた
  • 学費やローンの心配

心理的な

問題

  • 日によって気分が変わる
  • 患者として扱われる
  • 疎外感
  • 家族への罪悪感
  • 生きる意味の喪失
  • 病気に気付かなかった自責感
  • どうにもできない無力感
  • 患者さんの思いとのズレ
  • 接し方がわからない
  • 大切な人を失う不安

 

コミュニケーションは、ストレスを和らげることができる一方、ストレスの要因になることもあります。相手のために良かれと思ってしたことなのに、期待する反応ではなかったということはありませんか?相手の意向や望みは推測しきれるものではありません。ご本人にしか分からないことが多いのです。