がん治療中にお口に起こる他の病気

写真・文章:国立がんセンター・がん対策情報センター
        冊子『がんと療養203』参考

抗がん剤や放射線治療によって起こる様々なお口のトラブルの中から主な症状である『口内炎』について、これまでお話をしてきました。

 

今日は、その他のトラブルについて、お話しようと思います。

 

抗がん剤治療中には、特に、苦味や塩味の味覚変化が起きることがあります。

味覚が変わると、食欲がなくなり、栄養不足も起こしやすくなります。そして、気分も落ち込み気味になります。味覚は、抗がん剤治療が終了して1ヶ月ほどで回復していきます。

放射線治療の場合、味覚の細胞に大きな影響を与えます。そのため、味覚の変化も大きいものとなります。全く味がしなかったり、何を食べても砂をかんでいるような味覚変化が起きる場合があります。味覚の回復は3~4ヶ月、又は1年以上かかる場合もあります。 

そして、がん治療中に体力が落ちて、お口の中の掃除が十分にできない時に、お口の中の粘膜や歯の周囲の歯肉に白いカビのようなものがつくことがあります。これは細菌の一種で、カビの仲間であるカンジダ菌が原因の口内炎の症状です。

この菌は、健康な人の口の中にも認められる菌です。
体力が落ちて抵抗力がなくなると、急に増殖し、粘膜がピリピリと痛みます。これらは、カビに効果のある軟膏や内服液を使い治すことができます。 

頭頚部がん治療で、抗がん剤投与と放射線治療を同時に行う場合、頭頚部のがん組織や周囲の正常組織を切り取らず、出来る限り機能を残して治すことを目的としています。

放射線がお口の周囲に当たり、唾液を出す細胞がダメージを受け、唾液が出にくい状態となります。すると、お口や喉がカラカラに渇いて唾液がネバネバしてきます。治療が終了しても、お口や喉の周囲には口内炎があり、しびれた状態が残ります。

食べ物を噛んで飲み込もうとしても、パサパサとして、食べ物がまとまらず飲み込めず、又、飲み込んでもスムーズに食道へ送り込まれずに間違って気管に入り込む誤嚥という症状が多くなったり、
夜中にお口が乾いて目が覚めてしまったり、唾液の殺菌作用がなくなってしまい虫歯が一気に増えてしまったりします。

ペットボトルに水を入れて持ち歩き、何回もうがいをしたり、市販の口腔保湿剤でお口の中を長時間湿らすなどの方法を用いて対処します。担当医の判断で、『塩酸ピロカルピン』(唾液腺を刺激して唾液を出す薬:保険適用)が処方されることもあります。